研究概要 |
慢性膵炎の発生機序解明のため、家系内で2代以上集族して発生しており、既知の成因が認められない家族性慢性膵炎および若年発症慢性膵炎を対象に今年度は以下の検討を進めた。 1. 家族性慢性膵炎は極めて稀な症例であるため、その発見と集約に努めた。現在非アルコール性で20歳未満で若年発生した例は20例で、また家族性に発生した慢性膵炎は3家系14例で兄弟4組親子3組計7組を治療中で、新たに既知の同一家系内で1例の確診例が出現した。 2. 家族性および若年発症慢性膵炎では、遺伝子異常の関与が予想されるが、ほとんど検討されていない。 HLA-Locusの解析では、1組の兄弟例で全てのHLA-Locus(DR2,DR4)が、1組の親子のC-LocusとDR-Locus(CW1,CW3,DR4,DRW9)が完全に一致していた。これら検討例ではDR-LocusでDR4が多い傾向であった。またクラスII抗原が関与する成績は得られなかった。 われわれは組織防御因子(膵線維化を含む)の異常が重要と考え、Reg蛋白とPSTI(Pancratic Secretory Trypsin Inhibitor)を中心に遺伝子異常の発見に努めた。家族性慢性膵炎を有する大家系の10例(非発症例1例)のリンパ球からDNAを抽出し、PSTIとRegでのエクソン中心のDNA増幅直接シークエンス法、すなわち、各種制限酵素で切断、PSTI、Reg蛋白のcDNAをプローブとしてサザンブロットを行い、非膵疾患例と比較検討して塩基の配列変化から変異の有無を検討中である。これまでのところ特に切断による長さの違いは認められていない。 3. 新物質の関与検索のため膵でのNO産生能について基礎的検討も行い、神経系、血流調節への意義を見いだした。
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