研究概要 |
原発性胆汁性肝硬変(PBC)は、近年肝機能検査の普及により本邦において、漸増している。申請者は、PBCに対してursodeoxycholic acid(UDCA)が有用であることを報告した。PBC患者におけるUDCAの4年以上長期投与における病理組織像の変化について,さらにUDCA長期投与前後における、MHC class I,class IIの変化についての検討を行った。その結果、UDCA長期投与により病期の進行はないが,組織学的には進行して行くことが明らかになった。またPBC患者におけるUDCAの作用機序としては免疫調節作用は少ないことが推測された。次にPBCモデル実験として、ラットを用いPBCの類似病変が出現するGVHRを作成し、MHC class I抗原の変化について検討した。可溶性MHC class I抗原量を測定することで、GVHRの評価が可能となることが考えられた。次に,B6マウスの脾細胞をIL-6 transgenic mice(B6.6)xbm16のF1 hybrid miceに注入することで,MHC class IIの異なるGVHRを誘導した。その結果,CNSDCを認め,抗ミトコンドリア抗体の本体である抗PDH抗体の出現を認めた。さらにIL-6の増加を認めた。しかしGVHRの程度は,B6.6を用いなかった(bm12xB6)F1において,B6.6transgenic F1 hybrid miceより強く出現した。(bm12xB6.6)F1 GVHRにおける抗PDH抗体量は,(bm12xB6)F1 GVHRにおいてよりも高かった。つまり,IL-6がGVHRにおける病変を制御している可能性が示唆された。さらに,B6とそのMHC class II mutantであるB6,bm16マウス並びに,それらのF1マウスにGVHRを起こし,UDCA,TUDCAを投与し免疫系の変動を検討した。GVHRの程度,MHC class II,CD4/CD8,ICAM-1の表出には,これらの胆汁酸の投与群,非投与群にて変化を認めなかった。以上より,比較的ヒトPBCの病態に近いモデルをマウスに作成することができた。さらにGVHRにおけるIL-6の関与が示唆された。また,UDCAの効果発現機序として細胞性免疫への直接関与は少ないと考えられた。 今後,ヒトPBCにおいて可溶性MHC class I抗原量,IL-6を検討し臨床病態像と動物モデルの比較をし,よりPBCの成因,病態,治療効果機序に関して検討を加えたい。
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