研究概要 |
発癌プロモーターやHBVあるいはHCVなどの肝炎ウイルスは細胞増殖調節機序に何らかの影響を及ぼし発癌に寄与すると考えられる。発癌プロモーターであるテレオシジンは肝癌の増殖を抑制し,形態を著明に変化させる。このテレオシジン作用のシグナル伝達には通常のプロテインキナーゼCとは構造的に異なると考えられるプロテインキナーゼCが関与することを見出した。このプロテインキナーゼは,おそらく細胞内の小胞体のカルシウムイオンチャンネルのリン酸化を介してカルシウムの細胞質への動員を抑制している可能性が示唆された。またテレオシジンはc-fosやp53の発現を促進することも示唆された。 同じ発癌プロモーターであるタプシガルジンは小胞体カルシウムを涸渇させ,核内カルシウムを変化させることによりクロマチン構造を変化させアポプトーシスを促進させる。マイトマイシCやエトポシドとは異なりp53を著増させることはないことから,これらの抗癌剤とは異なる機序でアポプトーシスを誘導すると考えられる。一方テレオシジンはそれ自体アポプトーシスを誘導することはないが,マイトマイシンCやエトポシドによるアポプトーシスの誘導を阻止する。これらの事実から発癌プロモーターは細胞のアポプトーシスの調節機序を介して癌化を促進させる可能性が示唆される。 一方,肝炎,肝硬変,肝癌患者からC型肝炎ウイルスRNAをRT-PCR法で検出し,ウイルスの非構造領域の増幅を行なってきた。さらにこのウイルスのエンベロープ領域やN_2,N_3領域の増巾を続けている。これらの遺伝子断片を発現ベクターやレトロウイルスベクターに組み込む作業を行っている。
|