血管内皮細胞は生理活性物質の産生を介して、血管平滑筋や臓器実質細胞の生理機能を調節することが近年知られるようになった。しかし、肝臓などの実質臓器内での血管内皮細胞の生理的役割は十分解明されていない。研究代表者らは、内皮細胞が血管作動性の生理活性物質の分泌を介して、肝実質細胞の増殖を調節する可能性を考え、内皮細胞の機能について以下の検討を行なった。 1)、ラットの肝類洞内皮細胞を培養し、血管作動性物質として、エンドセリンとプロスタノイドの分泌を検討した。プリン作動性受容体を介した調節を受けることを明らかにしたが、これは次にのべるウシ頸動脈内皮細胞系と共通した性質であった。 2)、ウシ頸動脈内皮細胞もエンドセリンとプロスタノイドを分泌すること、及びそれらがプリン作動性受容体によって調節されることを確かめた。特に細胞外ATPはエンドセリン分泌を抑制したが、内皮由来血管拡張因子(EDRF)の産生の起らない条件でもこの反応がみられた点が注目された。 3)、ラットの肝臓Kupffer細胞の培養系を用い、プロスタノイドの分泌を検討した。類洞内皮細胞との性質の差異を明らかにした。 4)、肝細胞初代培養系を用いて、エンドセリン、プロスタノイドのDNA合成における作用について検討した。 以上から、類洞内皮細胞はプロスタグランディンの産生を介して、肝細胞のDNA合成を調節している可能性が示された。
|