研究概要 |
1.増殖抑制因子の精製:ゲル濾過にて精製を行なったところ分子量が20万以上と1万以下の分画に肝細胞のDNA合成を抑制する因子が含まれていることが判明した。後者をFF-GIと暫定的に命名し、この因子の性質について検討した。 2.FF-GIの作用機序:(1)FF-GIは培養肝細胞のDNA合成を濃度依存性に抑制するが、蛋白合成能は障害せず、また肝細胞の形態変化も生ぜずこの因子には細胞障害性はないと考えられた。(2)FF-GIはインスリン,EGF添加後12-18時間に主に作用し肝細胞のDNA合成を抑制した。これはTGF-βなどの肝細胞増殖抑制因子とは明らかに異なるものである。(3)FF-GIにはアミノ酸分解作用やサイミジン分解作用はみられなかった。(4)FF-GIはAH66やK562などの細胞株にはDNA合成抑制作用は示さなかった。 3.FF-GIの物理化学的性質 トリプシン、ジチオスレイトール処理にて失活するが、熱処理や酸処理(1N酢酸)には比較的安定であった。 以上よりin vitroにおいてFF-GIは細胞毒性や栄養障害性以外の機序で正常肝細胞のDNA合成を抑制し、また腫瘍細胞には作用せず、既知の肝細胞増殖抑制因子とは異なる因子と考えられた。 今後FF-GIのさらなる精製、抗体の作製、他の細胞への影響、in vivoての作用について検討していく予定である。
|