研究概要 |
1.増殖抑制因子の精製:FF101肝癌細胞の培養上清をゲル濾過し培養肝細胞に添加したところ、分子量20万以上と1万以下の分画にラット肝細胞のDNA合成を抑制する因子が存在することが判明した。後者をFF-GIと命名し、この因子のさらなる精製と検討を行なった。 2.FF-GIの作用機序:(1)FF-GIは肝細胞に対し細胞障害性を示すことなく、そのDNA合成を濃度依存性に抑制した。(2)FF-GIにはアミノ酸分解作用やチミジン分解作用はみられなかった。(3)FF-GIは肝細胞の細胞周期の中でも主にG_1後期からS期に作用し、TGF-βの作用時期よりもさらに遅かった。(4)FF-GIは抗TGF-β抗体にてその抑制作用は阻害されなかった。(5)FF-GIはラット肝癌細胞株(AH66)やヒト白血病細胞株(K562)などの細胞株にはDNA合成の抑制作用は示さなかった。 3.FF-GIの物理化学的性質:分子量は1万以下で熱、酸には比較的安定でトリプシン、DTTにて失活した。 4.in vivoでの検討:ラットにFF101細胞を皮下移植後70%部分肝切除を行なったところ肝再生の抑制がみられた。 無血清、無蛋白培地で樹立したラット肝癌細胞株FF101は自己の増殖を促進するFF-GFを産生するのみならず、この腫瘍の発生母体である肝細胞に対しては増殖を抑制する因子をも同時に産生していることが判明した。そしてこの因子は作用機序や物理化学的性質から既知の肝細胞増殖抑制因子(TGF-β,IL-1β,IFN-γ etc)とは明らかにことなるものと考えられた。
|