研究概要 |
M鎖を含むラミニンのモノクローナル抗体,従来のEHSラミニン抗体およびラミニンb1の発現を再生肝、慢性四塩化炭素障害肝,およびヒトの硬変肝,肝細胞癌について比較した。ラミニンのmRNA発現は急性肝炎初期に増加するが、再生肝では著明ではなかった。一方再生肝では免疫組織学的な染色性からM鎖を含むラミニンは再生肝では増加せず、EHSラミニンは再生肝で染色性の増加がみられた。急性障害から慢性障害肝においてはM鎖を含むラミニンの染色性が増加した。ヒトの肝硬変および肝細胞癌では肝硬変の線維の部にM鎖を含むラミニンが増加したが、肝細胞癌の癌部ではEHSラミニンが特異的に増加した。肝細胞癌では軟接部にラミニンの発現の増加がみられた。ラミニンレセプターであるインテグリンについては現在発現および生成の変動を検討中である。 上記の結果からEHSラミニンは細胞増殖の際の細胞間相互作用により重要な役をもっているが、これに反し新しいラミニンであるM鎖を含むラミニンは肝における炎症とその後の線維化により重要な意義をもっていると考えられる。これらを調節するサイトカイン,ラミニンレセプターであるインテグリンは細胞間相互作用に重要な役を有していると考えられる。
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