新しいラミニン(ラミニンM)をラット再生肝、急性障害肝、慢性障害肝あるいは人の肝硬変、肝細胞癌における局在、血清中の変動を測定し、従来のラミニンAとは多くの点で異なる結果を得た。 正常肝ではいずれも血管、胆管壁に認められるがラミニンMは門脈域の線維性部分に認められる。急性障害肝でラミニンMは肝小葉内に強く染色され、肝細胞内にも局在が認められる。慢性障害肝、肝硬変ではラミニンMは拡大した門脈域の線維および類銅壁に沿って強く染色されるが、ラミニンAは脈管壁以外の染色性の増加は認められない。肝細胞癌を伴った肝硬変では、ラミニンMは肝硬変の線維化部位に染色されるが、肝癌内部には認められない。これに反し、ラミニンAは癌組織内には強く染色され、線維化部位には認められない。 肝疾患患者血清ではいずれもラミニンMは高値であったが、急性障害および線維化の指標と考えられた。肝細胞癌でとくに上昇する例は認められなかった。 ラットの再生肝でラミニンMは12時間の早期に門脈および中心静脈周囲の肝細胞に染色されるが、ラミニンAは類洞壁にのみ染色される。これらの変化は急性障害肝においてもほぼ同様である。 ラミニンは細胞接着因子を介して細胞間相互作用および細胞とマトリックス間の作用に関与している。ラミニンMは肝再生時に細胞間相互作用に関与し、慢性障害では線維形成に関与している可能性がある。一方ラミニンAは血管内皮での反応あるいは癌の浸潤、転移など異なった機能をもっていることが推測された。
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