アルブミンおよびアルファ-フェトプロテイン遺伝子発現における転写因子の解析

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04670437
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 中田 恵輔 長崎大学, 医学部, 助手 (40217740)
• 研究分担者: 谷口 健治 長崎大学, 医学部, 医員 ; 島 正義 長崎大学, 医学部, 助手 (50226198)
• キーワード: アルファ-フェトプロテイン / アルブミン / 転写因子 / 肝細胞癌

研究概要

アルブミン(Albumin)とアルファ-フェトプロテイン(AFP)遺伝子の発現は鏡面的関係を有しており、生後Albuminの発現が高いレベルで維持されるのに対し、AFPの発現は著しく抑制される。この機序については、転写因子の活性化あるいは不活化が関与していると考えられ、特にAFP遺伝子のプロモーター領域とエンハンサー領域間に存在するサイレンサー領域の活性化が示唆されている。また、肝癌細胞ではAFP遺伝子の再発現がみられ、サイレンサー機能と癌化の関連が予想される。
転写因子の活性化には種々の増殖因子が関与しており、本年度の研究ではヒト肝細胞増殖因子、腸内細菌由来のshort chain fatty acidあるいは膠質浸透圧の転写因子に及ぼす影響を検討した。その結果、ヒト肝細胞増殖因子がAFP遺伝子プロモーター活性の抑制を介して同遺伝子の発現を容量依存性に低下させること、膠質浸透圧が同様にHNF-1転写因子の活性低下を誘導し、AFPおよびAlbumin遺伝子発現をともに抑制するととを報告した。また、塩基性線維芽細胞増殖因子はc-myc癌遺伝子の発現を増加させるが、AFP遺伝子発現に対してはむしろ抑制的に作用することが明らかになった。さらに、腸内細菌由来とされるshort chain fatty acidがAFP遺伝子のサイレンサー活性を上昇させる可能性が示唆され、生後のAFP遺伝子発現抑制に関与しているものと考えられる。今後は、このサイレンサー蛋白についてその同定を行う一方、正常肝細胞と肝癌細胞におけるサイレンサーの発現あるいはサイレンサー活性の差異を検討予定である。

研究成果

• [文献書誌] Keisuke Nakata: "Transcatheter arterial embolization of hepatic neoplasms" Critical Reviews in Oncology/Hematology. 13. 93-105 (1992)
• [文献書誌] Toshihiro Nakayama: "Expression in human hepatocellular carcinoma of nucleoside diphosphate kinase,a homologue of the nm23 gene product" Journal of National Cancer Institute. 84. 1349-1354 (1992)
• [文献書誌] Masahiko Hatano: "Hepatocyte growth factor down-regulates the α-fetoprotein gene expression in PLC/PRF/5 human hepatoma cells" Biochemical and Biophysical Research Communications. 189. 385-391 (1992)
• [文献書誌] Takuya Tsutsumi: "Regulation of albumin and α-fetoprotein gene expression by colloid osmotic pressure in human hepatoma cells" Gastroenterology. 104. 256-262 (1993)
• [文献書誌] Koichi Tasaki: "A physiological role of epidermal growth factor in cell kinetics of gastric epithelium" Life Sciences. 52. 1135-1139 (1993)
• [文献書誌] Keisuke Hamasaki: "Changes in the prevalence of hepatitis B and C infection in patients with hepatocellular carcinoma in the Nagasaki Prefecture,Japan" Journal of Medical virology.