研究概要 |
1.ラット摘出肝灌流を用いた実験結果。 塩酸パパベリンは肝内vesicle transportの指標であるhorseradish peroxidaseの胆汁分泌を増加させた。また塩酸パパベリンは低濃度(25muM)のTCDCA、または高濃度(75muM)のTCA,TUDCAの投与時の胆汁酸排泄量を有意に抑制した。高濃度TCA(75muM)の持続投与下で塩酸パパベリンを15分間だけ投与すると、胆汁酸排泄量は15分間低下するが、塩酸パパベリン投与中止後明らかな増加を認めた。この結果は、塩酸パパベリンの胆汁酸排泄に対する抑制は、胆汁酸の肝における摂取レベルの阻害でなく、肝細胞からの排泄レベルで抑制していることを示唆するものと考えられた。一方、低濃度のTCDCA、または高濃度のTCAの持続投与で胆汁うっ滞が惹起されるが、vesicle transportを促進させるグルカゴン、DBcAMPはこれを抑制した。また、肝細胞内Ca^<2+>([Ca^<2+>])を増加させるvasopressinは肝内vesicle transportを促進させ、かつ胆汁酸の胆汁中排泄を増加させた。 2.ラット初代培養肝細胞を用いた実験結果。 培養液中のLDH活性を指標に肝細胞障害を検討した結果、肝細胞からの胆汁酸排泄を抑制するパパベリンは、肝細胞内の胆汁酸量を増加させることにより、胆汁酸による肝細胞障害を憎悪させた。逆に胆汁酸の排泄を促進するグルカゴン、DBcAMPは肝細胞内の胆汁酸量を低下させることにより、肝細胞障害を有意に抑制した。同様に、肝細胞内Ca^<2+>([Ca^<2+>])を増加させるvasopressinも肝細胞障害を明らかに抑制した。 以上から、胆汁酸の肝内輸送にはvesicle transportが関与していることが推定された。肝内vesicle transportの促進と抑制によって肝内胆汁酸量の増減が起こり、その結果、肝細胞障害、胆汁うっ滞が惹起されることが考えられた。
|