肝における胆汁の生成は、肝の微小循環、肝細胞機能、毛細胆管の排泄能などにより影響を受ける。当該年度の研究は、主に培養細胞を用いて行った。肝微小循環は、移植の際招来される虚血-再還流障害の発生機構において極めて重要で、この微小循環調節機構を解明する事は有用である。このため類洞壁を構成する伊東細胞、Kupffer細胞を培養し詳細な検討を行ったところ、伊東細胞はactin、myosin、desmin等の収縮系蛋白を多量に含有し、血管収縮因子であるendothelinを添加すると細胞突起、胞体の収縮を認め、actin及びmyosinの阻害剤の投与により収縮阻害が惹起された。生体において伊東細胞に於ける細胞骨格系が類洞血流をコントロールする可能性を強く示唆した。Kupffer細胞に関しては、細胞骨格系蛋白により調節された偽足の運動による貪食運動が明かとなり、この貪食により類洞血流が阻害される可能性が考えられた。 肝細胞機能に関しては、細胞内Ca^<2+>濃度を画像解析装置を用いて動的、可視的に解析した。この細胞内Ca^<2+>濃度は、様々なagonistにより上昇し、一部の細胞においてはoscillationとして捉える事が出来た。肝移植後の肝再生と深く関わる事を示唆した。毛細胆管の排泄能に関しては、培養肝doubletcell以外に人工基質を用いて3次元培養し再構築された毛細胆管に蛍光色素の排泄がATP依存性に起こる事を明らかにし報告した。
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