研究概要 |
喘息患者未梢血の白血球分画に,エルトリエーターおよびパーコール濃度勾配法を用いて,好酸球を90%以上に精製する技法はすでに確立した。その高度に分画精製した好酸球にパッチクランプ法を用いて細胞内を灌流し脱顆粒に対するGTP結合蛋白(G-蛋白)の影響を定量的に解析した。すなわち、好酸球細胞内を既知の濃度の細胞内Ca〔Ca〕iにより潅流したところ,細胞膜容量の増大が認められた。これは好酸球細胞内の顆粒膜が細胞膜に融合(脱顆粒)を反映しているものである。なぜなら,膜容量の増大が認められた細胞においては,好酸球顆粒中の生理的活性物質の一つである好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)が細胞外に放出されている事を酵素化学的に証明し得た。それ故、細胞内灌流後の細胞膜容量の増大が脱顆粒のよい示標となる事が確認出来た。次にこの方法を用いて種々の濃度の〔Ca〕iで好酸球細胞内を灌流した。その結果,細胞膜容量の増大を灌流開始時の値を100%として表わすと〔Ca〕i1μMでは127%,10μMでは140%の細胞膜容量の増大が認められた。次にこのCaによる脱顆粒に対するG-蛋白の影響を検討した。すなわち,同様の条件下において,GTPの非加水産物であるGTP-γ-Sを100μMを加えて脱顆粒の変化をみたところ,〔Ga〕i=0.1μMでは125%と,1μMでは180%,10μMでは220%と各々〔Ca〕i単独に比して明らかな脱顆粒の増大が得られた。この事は,好酸球における脱顆粒がG-蛋白によりその反応の増大をきたす可能性を示す。Northern blot法により人好酸球にはsmg p21のmRNAが発現されている事を証明した。現在このG-蛋白の生理的意義について検討を加えている。
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