研究概要 |
1.ヒト切除肺を細切後、ヒトmonoclonal IgEで受動感作しマウス抗ヒト抗体で刺激し、上清中および組織中のtumor necrosis factor(TNF)活性およびTNFmRNAを測定したところ、活性は2時間後、mRNAは1時間後に検出され4時間まで上昇した。免疫組織化学的にTNF産生細胞を検討したところ、肥満細胞,肺胞マクロファージおよび気道上皮細胞が陽性であった。電顕的には、TNFは粗面小胞体と核周囲領域に局在し、IgEは肥満細胞とマクロファージの細胞表面に認められた。 2.TNFのヒト好酸球細胞株EoL-1の分化に対する影響を検討したところ、TNFとインターフェロン-γ存在下に培養すると、PMA刺激によるH_2O_2の遊離が誘導され、それと平行してCmyc mRNAの発現が抑制された。 3.ヒトヒスタミン合成酵素であるL-ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)を支配する遺伝子の転写開始点と調節領域の構造を解析した結果、細胞特異的な遺伝子発現に重要なGATA配列が見いだされた。GATA-1とGATA-2は肥満細胞の分化に深くかかわっている転写因子であるので、今後、これらの因子を中心に、HDC遺伝子の発現と本細胞分化との関連を分子生物学的に解析していく予定である。 4.蛔虫抗原感作により作成した遅発型喘息モルモットモデルを用いて、漢方製剤である柴朴湯の効果を検討した。柴朴湯は遅発型喘息反応を抑えるとともに、肺組織中への肥満細胞や好酸球の集積を抑制した。また、肺組織中のTNF-αやinterleukin-1 α_1βの発現を免疫組織化学的に検討したところ、本剤によりこれらサイトカインの発現が抑制される傾向にあった。
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