研究概要 |
本研究において、我々は特発性間質性肺炎・肺線維症の発症、および増悪機構における外因性因子としてのインフルエンザウイルスの役割について、インフルエンザウイルスの有する各種酸素ラジカル産生誘発能に焦点をあて、解析を進めている。一方、我々は、生体内で生成される酸素ラジカルの検出、定量法の確立を試みており、その知見にもとづき、個々のラジカルの消去剤の検索を行っている。 この様な研究のアプローチにより、本年度得られた知見は、マウスインフルエンザウイルス肺炎モデルの感染肺局所において、無機ラジカルの一種である一酸化窒素(nitric oxide,NO)(すでに生体内において血管弛緩反応の情報伝達物質であることが明らかにされている)の合成酵素活性が著明に亢進していることを見出したことである。さらに、我々は、このNOの特異的消去剤であるimidazolineoxy1 N-oxide誘導体を発見し、同時に本化合物を用いて生体内で生成されたNOの定量することが可能であることを報告している(Biochemistry,32,827-832,1993)。 近年、米国のBeckmanやPryorらにより、生体内で生成されるNOとO_2^<・->がすみやかに反応し、より反応性の高いONOO^-が産生し、組織障害を来たす可能性が指摘されており(PNAS,87,1620,1990;Chemical Research in Toxicology,5,834,1992)、我々がこれまで報告してきたマウスインフルエンザウイルス肺炎病態におけるO_2^<・->の過剰生成に加え(J.Clin.Invest.,85,739,1990)、本年度見出したNO合成の亢進により、酸化的反応性の高いONOO^-の生成がもたらされ、これがマウスインフルエンザウイルス肺炎の組織障害の機構の一つであることも示唆されるものと思われる。
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