研究概要 |
本研究において、我々は特発性間質性肺炎・肺線維症の発症、および増悪機構における外因性因子としてのインフルエンザウイルスの役割について、本ウイルスの感染病態において認められる各種酸素ラジカル生成誘導に焦点をあて解析を行った。一方、我々は最近、生体内で生成する一酸化窒素(NO)に対する消去剤であるimidazolineoxyl N-oxide誘導体を発見し、本化合物が生体内においても、有効にNOを阻害することを報告している。そこで、本研究は、マウスインフルエンザウイルス肺炎モデルの肺局所におけるNO生成動態と、上記NO消去剤による治療実験を試みた。 その結果、マウス肺内でのインフルエンザウイルス増殖に伴い、肺局所において、NO合成酵素のmRNAの発現および活性の著明な上昇を認め、これは肺内での活性酸素種の一つであるスーパーオキシドラジカル(O_2^-)の生成誘導の時間的推移と全く一致していることがわかった。さらに、NO消去剤をウイルス感染マウスに投与することにより、有意な治療効果(致死率の改善)が認められ、同様の治療効果がNO合成酵素阻害剤によっても発現された。 我々がこれまで報告してきたマウスインフルエンザウイルス肺炎病態におけるO_2^-の過剰生成に加え(J.Clin.Invest.,85,739,1990)、本年度見出したNO合成の亢進により、酸化的反応性の高いONOO^-の生成がもたらされ、これがマウスインフルエンザウイルス肺炎の組織障害の機構の一つであることが示唆された。
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