研究概要 |
【方法】患者30例(サルコイドーシス12例、原因不明の間質性肺炎10例、膠原病肺病変5例、夏型過敏性肺臓炎3例)正常コントロール20例。肺病変の確定診断は気管支鏡下肺生検組織、BAL細胞分画により行なった。NMR測定検体は新鮮静脈血10mlより、比重分離にて10^6-10^7個のリンパ球を得た。PBS-D_2Oにて2回洗浄後、同液にて22μ1の浮遊液とし1.8mmの試料管に封入した。90MHzフーリエ変換NMR装置を用い、70゚パルス、繰り返し時間2秒、water signal suppression下にspinningしながら37℃で4000回の積算を行ない、^1Hスペクトルを得た。スペクトルの解析は細胞膜成分に由来するピークとされるN(CH_3)_3,CH_2COO,(CH_2)_n,CH_3ピークにつきGAUSSIAN CURVE FITTINGにて高さと面積を求め、病変による変化が最も少ないCH_2COOピークとの比を正常コントロールと比較した。病変の臨床的な活動性判定は胸部X線像、臨床検査成績(CRP,ESR,CBC,ACE,LDH)にて行った。同時に採取した末梢血リンパ球の表面マーカーをFACScanにて検討した。また、正常人とサルコイドーシス患者の培養リンパ球のIL-2刺激に対するスペクトル変化を比較検討した。 【結果】サルコイドーシスを含む全ての活動性の肺間質性病変を有する患者でメチル領域[(CH_2)_n,CH_3]の増高が明かであった。この変化は病勢の消長に一致して増減していた。これらピークの面積、高さは正常者の値と比較して統計学的にも有意に高い値を示した。またサルコイドーシス患者ではIL-2刺激後、正常人に比し約20時間で明かなCH_2ピークの増高が認められた。我々の方法では測定感度を従来の10倍あり10mlの採血で測定が出来、患者の末梢血成熟リンパ球のスペクトル変化と臨床的な病勢の関連を経時的に検討することが可能であった。今後は、スペクトルの変化がどのようなリンパ球機能変化を反映しているかを基礎、臨床研究両面から検討し臨床検査としての有用性を確立していく必要がある。
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