研究概要 |
ヒトパラインフルエンザウイルス1型(HPIV-1)のモノクローナル抗体(MAb)を作製し(平成3年作製)、それらを用いて同定した臨床分離ウイルス24株の抗原変異の解析をELISA法等で行った。その結果、HN蛋白に1970年代を境に大きな抗原変異が認められる事が判明した。これに対し、F蛋白は抗原性が良く保存されていた。またNP蛋白のある抗原が1970年代から欠落することも認められた。M,P蛋白については特徴的変化は認められなかった。HN蛋白の遺伝子はHPIV-1、センダイウイルス間でホモロジーが高いことが示されていたが、HN蛋白の共通抗原性は低かった。HPIV-1のV蛋白の欠落は古くからであることをPCR法で示した。また、HPIV-1のNP、M蛋白の遺伝子の全シークエンスを決定し、パラミクソウイルス内での位置づけを明らかにした。 一方ヒトパラインフルエンザウイルス4A型、4B型(HPIV-4A,4B)については4B型のHN,F蛋白の遺伝子の解析が遅れていたが、HN遺伝子のコーディング領域の解析を終え、既に解析を終えた4A型のHN遺伝子と比較したところアミノ酸レベルで87.3%のホモロジーを有した。またこの両者間の糖鎖結合部位が2ケ所異なり、両HN蛋白間の共通抗原性の低さの原因の1つであると考えられた。また4A型のHN蛋白をL細胞で発現させ、MAbを用いて抗原性の解析を行ったが、上の結果を支持する結果であった。HPIV-4のF蛋白の遺伝子については、4A型のFの全シークエンスを明らかにした。4B型のFについてはコーディング領域の部分シークエンスが明らかとなっており、4A型、4B型間でホモロジーが相当高く(90%以上)アミノ酸が良く保存されていることが判明し、共通抗原性の高さを裏づけた。今後は4B型のHN,Fの遺伝子解析を急ぎ、リコンビナントDNA、4A-4BのキメラDNAの作製、動物細胞での発現を行い、両ウイルスの抗原性の解明及びサブユニットワクチン開発の基礎としたい。
|