研究概要 |
神経細胞死のメカニズムとその予防的治療法開発のための単一神経線維モデルを開発するために本年度は種々の試行錯誤をくり返した。当初予定していた心穿刺・脱血による方法は1つのデータを得るために一匹のラットを椎弓切除し用いなければならないため、例数を増して統計処理することが実際上不可能であることが判明した。また脱血後血圧の低下率などを各個体でコントロールすることが実際にできない。そこで、我々は一本の神経根の近位端と遠位端を結さつすることにより阻血をおこす方法を用いることとした。この方法によって一匹のラットで数個のデータを得ることででき、また脳虚血、特に白質梗塞のモデルとなりうる。この一本の神経根の一端を刺激し、他端から神経活動電位を記録することにより、神経線維の虚血に対するバイアビリティを調べることができる。本年度はこの虚血モデルを完成することが主な成果となった。来年度はこれを用いていよいよNa-Ca Exchanger阻害剤を用いて虚血に対する保護作用の有無を検討する予定である。 これ以外の成果として単一神経線維における伝導ブロックを解析した(梶、神経円科37:429-449,1992)。また伝導ブロックを伴なうニューロパチーにおける病態を明らかにした(Kaji etal.Ann Neurol33:152-158,1993)。
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