研究概要 |
(1)ジスキネジア発症に関する検討:最近,われわれは各種の脳障害課程に免疫系が関与しているとの成績を得ている.そこで,iminodipropionitrile(IDPN)によるラットのジスキネジア発症にはたして免疫系が関与してるか否かを,免疫抑制薬cyclosporin A を用いて検討した.その結果,IDPN連日7日間投与の度ごとにその1時間前にcyclosporinAを組み合わせて投与すると,ジスキネジア発症までの期間が短縮し,ジスキネジアの症状がより高度になった.しかも,セロトニン代謝とドーパミン代謝が著しく亢進していた.以上のように免疫系はジスキネジア発症を抑制していることが判明した. (2)ジスキネジア症状の修飾に関する検討:ジスキネジア症状はD1ドーパミンアゴニストとD2ドーパミンアゴニストそれぞれで増強されるが,両者を少量併用すると無動状態に陥ることが判明した.さらに,ムスカリン性アンタゴニストによっても増強,ムスカリン性アゴニストによって抑制された.以上のように,ジスキネジア症状はドーパミン系とムスカリン性アセチルコリン系によって何重にも制御されている. (3)分子生物学的検討:IDPN連日投与2週間後の脳内各部位における核抽出液中のcAMP response element(CRE)結合活性をgel mobility shift assayにて検討した.IDPN連日投与により,CRE結合活性は生食投与対照群に比して前頭皮質,側坐核において有意に増加し,海馬,視床+中脳においても同様の増加傾向が認められた.逆に線条体ではCRE結合活性はIDPN連日投与により逆に有意に減少し,菱脳においても減少傾向が認められた.このように,IDPN投与ジスキネジアモデル動物の脳内ではcAMPに依存する転写制御に異常が見られた.
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