研究概要 |
本年度はPAF拮抗薬(TCV‐309)が全脳虚血後の遅発性脳血流低下に影響を及ぼすか否かを検討した。 対象及び方法:成猫15匹を用い、麻酔下に調節呼吸した。左側股動脈および舌動脈にカニューレを挿入しそれぞれ全身動脈モニターおよび頚動脈内へのcarbon‐black(CB)溶液注入用とした。光電装置(Am J Physiol 235:H56‐H63,1978)を左側頭頂部に装着し、脳血液含量(CBV)を連続記録した。さらにCB溶液0.1mlを頚動脈内に注入し脳組織血液通過時間(MTT)を求めた。脳血流量(CBF)はCBVとMTTよりStewart‐Hamiltonの式を用いて算出した。心停止は開胸後、細動器を用いて心尖部に直接通電し心室細動をもたらす事により作製した。さらに心停止30秒後に直流除細動器を用いた除細動により蘇生した。9匹では、TCV‐309(10mug)を心停止5分前に静脈内投与した(T群)。他の6匹はcontrolとして用いた(C群)。CBV,MTT,CBFは心停止前、心停止中、蘇生直後、5分後、15分後、30分後、60分後、120分後、180分後に測定した。 結果:T群、C群ともに、心停止蘇生直後にはCBV,CBF,MABPの一過性の有意な増加、MTTの有意な減少が見られた。またC群ではCBFは心停止前51±4(mean±SEM)ml/100g/min,蘇生後30分38±4(p<0.05),180分23±3(p<0.05)であり蘇生後30分後より180分後までpost ischemic hypoperfusionが見られたが、T群では蘇生後30分後から180分後までCBFは心停止前に比較し有意な変化を示さなかった(心停止前60±3ml/100g/min,蘇生後30分55±6,180分59±5)。 結論:脳虚血中に遊離されるPAFが短時間の心停止蘇生後に生じるpost ischemic hypoperfusionの生成に重要な役割を果している可能性が示された。
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