paraneoplastic cerebellar degeneration(PCD)患者の血清及び髄液中に存在する抗神経細胞抗体の認識する小脳Purkinje細胞抗原PCD17のcDNAを原核細胞発現ベクターに組み換え、大腸菌内での蛋白合成を試みた。合成された組換え体蛋白を用いて、paraneoplastic syndrome患者の血清と髄液をWestern blot法により検索したところ、検索した全てのPCDの患者の血清および髄液中にこのPCD17抗原を認識する抗体の存在が確認された。一方、paraneoplastic sensory neuropathyやparaneoplastic limbic encephalitisの患者の血清あるい髄液中には、検索した全ての検体においてPCD17抗原を認識する抗体は存在しなかった。このことより、PCD17蛋白がPCDに特異的かつ共通する抗原であることを明らかにした。さらに、ELISA法により患者の血清及び髄液よりPCD17に対する抗体を迅速に測定する方法を確立した。また、PCD-17遺伝子を制限酵素により、種々の断片を作製してベクターに組換えた後、種々の欠損部位を有する組換え体蛋白を合成し、その抗原性をWestern blot法とELISA法により検討した。その結果、leucine zipper domainに相当するアミノ酸の領域が、PCD患者の血清中に存在する抗purkinje細胞抗体によって認識されることが明らかとなり、このことから、leucine zipper領域がPCDに特異的かつ共通する抗原の主要なB細胞エピトープであることを確認した。
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