研究概要 |
1、婦人科癌と乳癌に伴う傍腫瘍性小脳変性症の抗小脳Purkinje細胞抗体の認識抗原である神経抗原蛋白PCD17の組み換え体蛋白をFreundアジュバントと共にBalb/c,C3H/HeJ,AKR,C57Bl/10,SJLの5種類のマウスに繰り返し能動免疫し、抗小脳Purkinje細胞抗体の産生及び神経症状の発現について検討した。初回免疫から約1年間の観察期間中では、いずれのマウスにも失調症状を含め明らかな神経症状の発症はみられず、これらのマウスの小脳組織においても小脳変性を示す明らかな神経細胞の脱落所見を確認することはできなかった。全てのマウスの系統において、その血清中に抗神経細胞抗体の存在が確認され、この抗体は小脳顆粒細胞と反応することはなく、小脳Purkinje細胞の細胞質を顆粒状に染色する特徴的な免疫組織化学所見が観察された。能動感作されたマウスの小脳Purkinje細胞細胞質には、対照抗原で感作されたマウスの小脳組織には決してみられないIgGの沈着が観察され、能動免疫により産生された抗体が神経細胞内に取り込まれた可能性が示唆された。 2、PCD17遺伝子の標識RNAプローブを用いて小脳と海馬のin situ hybridizationを試み、小脳組織においては免疫組織化学と一致する発現パターンを確認すると同時に、海馬においては蛋白の発現がみられない錐体細胞層や顆粒層の神経細胞にもPCD17mRNAが発現していることを見出した。 3、昨年度の本研究によりcDNAクローニングされた肺小細胞癌に伴う傍腫瘍性辺縁系脳炎の抗神経細胞核抗体の認識抗原である神経蛋白PLE21について、その発現が脳に特異的であることを明らかにした。さらに、このcDNAクローンの塩基配列から推定されるアミノ酸配列より、肺小細胞癌に伴う傍腫瘍性神経症候群に関連する他の神経抗原蛋白であるHuD抗原と高い相同性を示し、同様に3個のRNA認識モチーフを有する蛋白であることを認識した。
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