研究概要 |
Herpes simplex virus(HSV)神経感染症においては、脳炎はHSV1型、脊髄炎・髄膜炎は2型によるとされる。従来、これらの診断は主として髄液抗体価の検索から推定されているにすぎない。しかし、compromised hostや小児例などでのHSV1,2型の区別は明瞭ではない。最近、導入されたpolymerase chain reaction(PCR)による髄液からのHSV DNA検査は陽性率の高いことが注目されている。さらに、本研究ではHSV1,2型共通DNA片を増幅させ、1,2型のプローベを用いて、hybridizationさせ型同定を行う。HSV脳炎・髄膜炎など神経系感染症における1、2型の役割を明らかにする。 1.HSV神経感染症17症例・髄液検索、経時的に髄液を-80℃に保存。 2.PCR増幅DNA片の峻厳ハイブリダイゼーションによるHSV型同定プライマーの設定:外被糖蛋白をコードする遺伝子で、1、2型で共通の配列部分を選択した(U_L44領域、両プライマーでは約30%の塩基が異なる)。増幅DNA片は約800bp長。ハイブリダイゼーション:マイクロプレートを使う方法(Inouye&Hondo,J.Clin.Microbiol.28:1469-1472,1990)で62℃+50%ホルムアルデヒドの峻厳条件下で実施。1、2型プローブでは、各標準株を用い、ビチオン-dUTPをPCRで取り組み込ませて作製した。 10例から検出され、HSV1型6例と2型4例同定された。脳幹脳炎1例と髄膜炎2例ではHSV1型であった。逆に、急性成人型脳炎1例においてHSV2型が同定された。急性辺縁系脳炎ではいずれも陰性であった。本研究はHSV神経感染の病態の解明、型識別に有用と結論づけられる。
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