デュシャンヌ型筋ジストロフィー(DMD)がX染色体上に存在するジストロフィン遺伝子の異常によって発症することが明らかになったが、ジストロフィンの欠損が症状とどう関連するかについては不明な点も多い。また、常染色体上に80%以上もホモロジーのある類似蛋白質の存在が指摘され、1992年12月に全構造が発表された。 私どもは、この蛋白質DRPとジストロフィンに対する特異的な抗体を作製し、ウエスタンブロットーゲルコンピューター解析システムを用いて発現量を検討したところ、DRPはジストロフィンとは異なり胎生筋に過剰に発現していることが明らかになった。マウスにおいては、胎生135日に最大となり、以下減少傾向を見せた。生後2日ではまだ検出可能であったが、成熟するとほぼ0になることが判明した。一方、ジストロフィンはこれとは逆に、胎生期での発現がほとんど認められず、生後に急に増加することがわかった。ジストロフィンとDRPの発現はあたかも逆相関をなすことが明らかになり、ジストロフィン欠損をDRPが代償する可能性も示唆された。このことは、ジストロフィン完全欠損のmdxマウス骨格筋においてDRPの発現が増大していることからもうかがえる。 次に、DMD患者においてDRPの発現が見られるかどうかについては興味が持たれていた。私どもは、ジストロフィン、DRPの構造が比較的異なるC末端付近の遺伝子構造をもとにプライマーを合成し、RT-PCR法を用いてmRNA量を比較することを試みた。RT-PCR法については、増幅回数によって直線性をもつ部分が少なかったため、定量的に論じるのは難しかったが、DMDで正常対照筋に比べ約1.5倍のDRPの発現上昇を確認した。今後、この方法を用いて正確な定量を行うと同時に、DRP発現上昇を治療手段とするよう研究を重ねたい。
|