能の細胞間に存在するコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)の機能を調べる目的で、(1)PC12D細胞やラット後根神経節の細胞増殖および突起形成に対するCSPGの作用と(2)ラット胎仔におけるCSPGの分布の変化と知覚神経節の軸索形成との関連を調べた。CSPGはPC12D細胞の細胞数の増加を阻害したが、PC12D細胞の細胞周期をG2期で阻害することによって起きることも明らかになった。一方、CSPGは、PC12D細胞や後根神経節からの突起形成も阻害した。知覚神経節は胎生12.5日齢ごろその形態が明らかになり、胎生13.5日齢にその軸索が神経管に達し、その後神経管内に侵入した。脳由来のCSPGの一つであるニューロカンに対する抗体は、胎生13.5日齢におけるラット胎仔の神経管の周囲、すなわち、boundary capと呼ばれる部分とroof plateを染色した。boundary capにおけるニューロカンの染色は12.5日齢ではほぼ一様にみられ、13.5日齢では軸索が神経管と接する部分以外でみられた。roof plateにおける染色は軸索が神経管内に侵入する時期と一致して濃くなった。この結果は、ニューロカンが軸索形成のbarrier moleculeとして作用していることを示している。一方、6B4プロテオグリカンは、増殖しつつあるいくつかの末梢神経節に検出された。また、6B4抗体は、PC12D細胞の増殖阻害を阻止することから、このプロテオグリカンが、細胞増殖に何らかのかかわりをもっていると思われる。このように、この研究では、脳由来の2つのCSPGの生体における機能を明らかにした。
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