ナトリウム/水素イオン交換輸送蛋白(NHE)には薬理学的検索から、いくつかのアイソフォームが存在すると推定されていた。最近、それらのものと思われるcDNAがクローニングされた。上皮細胞においては、上皮側膜のNHEはアミロライドに対して感受性が低く、一方、基底側膜のNHEは非上皮細胞一般に認められるNHEと同様にアミロライドに対して感受性が高いことが知られていた。即ち、アミロライド低感受性のアイソフォームは上皮側へ、アミロライド高感受性のアイリフォームは基底側へとターゲットされると思われるわけであるが、直接的証明はなされていない。アイソフォームが異なれば、その機能調節が異なるので、腎由来培養細胞における上皮側、基底側膜のNHEが実際にそのcDNAが異なるアイソフォームであるかどうかの解析を行った。腎尿細管由来培養細胞であるOK細胞に、私達がクローニングしたヒトのアミロライド高感受性NHE(NHE-1)cDNAを移入して、上皮側、基底側のNHE活性をpH感受性の色素を用いて分離測定した結果、移入したヒトのNHE-1は基底側膜で発現していることが明かとなった。すなわちヒトのNHE-1自体に上皮細胞において基底側膜へとターゲットされるシグナルが内在しているものと思われる。一方、尿細管由来の他の培養細胞であるLLC-PK1細胞においては、LLC-PK1細胞のNHE-1のmRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを作用させると、基底側膜のNHE活性のみが低下すると思われる結果を得ている。このことは、LLC-PK1細胞の基底側膜のNHEはNHE-1であり、上皮側のものはcDNAが異なるアイソフォームであることを意味する。即ち、尿細管由来の培養上皮細胞においては、上皮側、基底側のNHEはそのcDNAが異なるアイソフォームであると思われる。
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