研究概要 |
(1)基礎的研究 (a)インスリン様増殖因子による心筋細胞肥大 インスリン様増殖因子(IGF)ファミリーによる心筋肥大への影響をラット培養心筋細胞を用いて評価した。IGF-Iは病理形態学的に、心筋細胞の肥大を誘発した。さらにIGF-Iは、心筋肥大のマーカーをしてよく用いられるskeletal α-actinなどの遺伝子発現を亢進させた(Circulation 1993;87:1715-1721)。IGF-IIも、心筋細胞に対して同様の肥大誘発作用を示した(J.Mol.Cell.Cardiol.1994,in press)。 (b)内因性エンドセリンによる心筋肥大 われわれは以前、ラット培養心筋を用いて、血管収縮物質であるエンドセリン(ET-1)が心筋特異遺伝子発現の亢進を伴う心筋肥大を誘発することを示した(Circ.Res.1991;69:209-215)。本研究では、心筋細胞においてpreproET-1(ppET-1)のmRNAが発現していること、それがangiotensin II(Ang II)により亢進されることをNorthern blot法とin situ hybridization法により示した。さらに内因性のET-1が実際にオートクリン/パラクリン因子として心筋細胞自体に作用している可能性を、最近開発されたETA receptor antagonist(BQ123)を用いる方法、およびppET-1に対するantisense oligonucleotideを用いる方法で示した(J.Clin.Invest.1993;92:398-403)。 (2)臨床的研究 本研究で、拡張型心筋症および肥大型心筋症の左室心筋において、実験的心肥大で心肥大のマーカーとして用いられるskeletal α-actin mRNAが、肥大の見られない患者群に比べ、増加していることが示された(論文投稿中)。
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