平成4年に引き続き、心筋梗塞犬の作成と左室動態の観察を行った。ついで心筋細胞、間質レベルのremodelingについて検討した。 閉胸麻酔下で、肥大心、コントロールの両群で、左頚動脈より冠動脈カテーテルを挿入し、バルーンカテーテルを用い左冠動脈前下行枝を4時間閉塞した。同時に、側副血行路形成を防ぐため冠動脈内へ一定量のコイル、ペーストを注入し、慢性梗塞犬を作成した。梗塞直前、冠動脈閉塞1時間後、3時間後、24時間後、3日後、1週後、2週後、4週後に麻酔下に左室圧測定(カテ先マノメーター)と左室造影を施行した。この際、肥大心群で心筋梗塞による死亡が多いため、十分な成績がまだ出されていないが、コントロール群に比較して、梗塞部、非梗塞部とも心室拡大が少ない傾向が示された。また、左室血行動態は梗塞後、収縮能、拡張能とも明らかに悪化したが、肥大心群でより顕著であり、これが梗塞後の死因の多さに関係するものと考えられた。左室容積、局所心筋長と左室圧の関係より、圧・容積関係、圧・局所心筋長を作成し、拡張機能(コンプライアンス)を評価したが、いずれも肥大心の梗塞で増大する傾向をみた。また、心筋細胞、間質(コラーゲン)レベルのremodeling、死亡時に、非梗塞部と梗塞部心筋を心筋繊維に垂直に切り取った切片の核をカウントすることにより、梗塞後の肥大心筋の拡大が主として、細胞の伸展(stretch)か、ずれ(slippage)によるremodelingによるものかについては目下検討中である。
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