心筋梗塞後の左室リモデリングを研究するため、実験的検討を加えた。圧負荷肥大心18頭、コントロール12頭の雑種成犬計22頭を対象に閉胸麻酔下(ペントバルビタール)に頚動脈より冠動脈カテーテルを挿入し、バルーンカテーテルを用い左冠動脈前下行枝を4時間閉塞し心筋梗塞を作成した。その直前、閉塞1時間後、3時間後、24時間後、3日後、1週間後、2週間後、4週間後に麻酔下に左室圧測定(カテ先マノメーター)と左室造影を施行した。左室形態は左室造影像をトレースし、容積を算出するとともに、拡張末期の長軸中点を中心として、心内膜面までの距離をその局所心筋の長さとした。これらの成績より心筋梗塞および肥大心が加わったときの虚血(梗塞)部と非梗塞部のリモデリングについて検討した。コントロール犬4例、肥大心13例が心筋梗塞作成後1日以内に死亡したため、それぞれ8、5頭で観察した。その結果、梗塞部の拡大は急性期2日以内に完了し、それ以降の拡大は認められなかった。一方、非梗塞部は急性期より拡大し、1週目まで拡大が続くことが明らかになった。これに対し、肥大心では急性の死亡が極めて多かった。しかし、コントロール同様、梗塞部の拡大は急性期2日以内に完了し、それ以降は認められない傾向を示した。また非梗塞部も急性期より次第に拡大、4週まで拡大が続いた。肥大心で梗塞が生ずれば急性期の死亡が多いこと、また梗塞後の心室リモデリングは梗塞部ではコントロール群とほぼ同じであること、非梗塞部では肥大心筋でもさらに拡張することが明らかにされた。今後、更に著しい肥大心を作成し、生化学的見地からのアプローチを加え、この問題について研究をすすめる予定である。
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