研究概要 |
1.ATP-sensitive K^+(カリウム)-channel blockerといわれるglibenclamideを経静脈投与することにより,イヌのin vivo冠動脈の周期性収縮を認めた。このモデルの意義,冠動脈攣縮との関連について検討した。 2.この周期性冠動脈収縮は細い冠動脈に著明であり,太い冠動脈では軽度であった。従って,このモデルは通常,臨床で認める冠動脈攣縮とは異なった。 3.この周期的冠動脈収縮は,nitroglycerinでは完全に制止し得ず,ATP-sensitive K^+-channel opener作用をもつnicorandilやcromakalimによりほぼ完全に制止し得た。また,カルシウム拮抗薬であるdiltiazemも周期性収縮をほぼ完全に制止し得た。この性質は臨床上遭遇する冠動脈攣縮に類似している。 4.他の,ATP-sensitive K^+-channel blockerであるtolbutamideを経静脈投与し,周期性収縮誘起を試みたが当剤は溶解度の面で充分量の経静脈投与は困難であり,成功しなかった。従って,この周期性収縮がATP-sensitive K^+-channelに特異的であるか否かは今後も更なる検討を要する。 5.glibenclamide誘起冠動脈周期性収縮は,propranolol,phentolamine,atropine前処置によるautonomic blockadeにより著明な影響は受けなかった。従って,周期性収縮発生に自律神経系が大きな役割を果たしている可能性は少ない。 6.Samahaらは,glibenclamide誘起冠動脈周期性収縮に心筋虚血の関与を示唆しているが,われわれが水素ガスクリアランス法を用いて評価した際には,心筋虚血は認めなかった。この点で他の報告とは異った。 7.この研究で観察された冠動脈周期性収縮が実際に臨床的冠動脈攣縮に関連しているかどうかは,更なる検討を要する。
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