研究概要 |
心筋細胞内グルタチオン-グルタチオンペルオキシダーゼ代謝系は酸素ラジカル障害に対して酸化-還元反応を介して細胞機能の保持に重要な役割を果たしている。ebselenはグルタチオンペルオキシダーゼ様作用、抗酸化作用を有しており、リポキシゲナーゼ阻害による抗白血球作用も報告されている。今回、ebselenによる心筋障害防止効果を検討した。犬冠動脈枝を90分間閉塞-5時間再潅流し、心筋梗塞モデルを作成した。ebselen(50mg/kg,n=18)は冠動脈閉塞前に経口投与した。心筋二重染色法(エバンスブルー、TTC)により梗塞量を算出し、局所心筋血流量は、カラーマイクロスフェア法により測定した。虚血部並びに非虚血部の心筋グルタチオン、ミエロペルオキシダーゼ活性(白血球浸潤度)も同時に計測した。その結果、(1)梗塞量は、対照群に比しebselen群では縮小した(39.1±4.9% VS 27.6±5.1%,p<0.05)。特に再潅流時にebselen血中濃度が高い群(>5μM、ebselen-H群)では著明に縮小した(20.8±3.1%)。虚血時の局所心筋血流量、血行動態の経時的変化には各群間で差はなかった。(2)虚血心筋では非虚血心筋に比しグルタチオンが著明に低下したが(1.57±0.11 VS 0.63±0.10μ mol/g,p<0.01)、ebselen群の虚血心筋ではグルタチオン含量の低下が抑制された(1.15±0.21μ mol/g,p<0.05)。(3)虚血心筋のミエロペルオキシダーゼ活性はebselen群で著明に抑制された。以上グルタチオンペルオキシダーゼ様作用を有するebselenにより心筋虚血-再潅流障害は著明に抑制された。ebselenは、虚血心筋での細胞内グルタチオン含量を保持し細胞保護作用を示すと共に、虚血心筋への白血球浸潤を抑制することにより心筋障害防止効果を示すことが示唆された。
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