研究概要 |
心不全心-心筋細胞のCaトランジエントの特徴を単離心筋細胞で明かにした.その結果,心不全心筋細胞Caトランジエントのpeak ratioはコントロールに比して有意に低下し,またCa除去機能の一つの指標であるT80L(amplitudeがpeak lightより80%低下する時間)も有意に延長したが,resting ratio,Max+d[Ca^<2+>]i/dt,max- d[Ca^<2+>]i/dtは低下傾向を示したが,有意な変化ではなかった.しかし,心不全心では筋小胞体(SR)のCaポンプの機能低下が報告されており,また,resting ratioはSRのCa除去機能と密接に関係していることから,我々は更に刺激頻度を変えて検討した.その結果,低刺激頻度ではCa動員,除去機能を示す各種パラメーターは正常,または経度低下しているように見えても,刺激頻度を上げると潜在的Ca動員,除去機能の異常が顕著になることが判明した.即ち,刺激頻度を上げていくと正常心筋細胞では徐々にresting ratioは上昇するがpeak ratioも上昇し,amplitude(peak ratio-resting ratio)は充分保たれているが,心不全心筋細胞では刺激頻度を上げていくと低刺激頻度からresting ratioの上昇が正常より高く,またamplitudeは徐々に減少し,ある頻度になるとresting ratioが急激に上昇しamplitudeが全くでなくなった.即ち,心不全心ではheart rateのコントロールが非常に重要である事を物語っており,またこのことは拡張型心筋症の重症心不全患者の治療法としてβブロッカーが有効な事があることが報告されてきたが,その作用機序を説明する基礎的データである.また,未だ拡張型心筋症等の重症心不全患者に体するβブロッカー療法の明確な適応基準がないが,我々の今回の結果は,その基準を決める重要な手がかりを示しているといえる.
|