研究概要 |
1.1978年の久山町成人検診を受診した満40歳以上の一般住民2449名(受診率82%)のうち,心血管病の既往歴のない正常血圧者を1988年まで10年間追跡し,高血圧発症率とその危険因子について検討した。その結果,男性では少量からの飲酒,女性では中心性肥満が高血圧発症の危険因子であった. 2.1967年,1978年,1988年に久山町で行われた断面調査成績を比較し,20年間にわたる血圧値と高血圧有病率,降圧薬服用率の推移を検討した.また1967年(前期)と1978年(後期)の受診者のうち心血管病の既往歴のない正常血圧者を各々11年間追跡し,高血圧発症率とその危険因子を比較・検討した.その結果,降圧薬服用者の増加とともに主に高齢者で血圧値の低下をみたが,高血圧有病率に有意な変化はなかった.この間男性の高血圧発症率に変化はなく,女性の発症率が後期で低下した.男女とも追跡中の体重増加が高血圧発症の有意な危険因子であった.また男性では,飲酒が前期・後期の追跡調査で高血圧発症の有意な危険因子となった.肥満に関連した高血圧が増加しており,高血圧を減少させるには飲酒制限とともに体重管理による発症予防が重要と考えられた. 3.近年インスリン抵抗性が高血圧の成因の1つとして注目されている.そこで,1988年の久山町検診において,75g経口糖負荷試験を受けた最近の集団(40-79歳の男女2480名,受診率80%)の断面調査成績をもとに,血清インスリン値と血圧値および高血圧の関連を検討した.インスリン値は,年齢,肥満度など他の関連因子と独立して血圧値および高血圧頻度と有意に関連した.同様の検討を60-79歳の高齢者についても検討した. 4.1961年から30年間にわたる久山町の追跡調査をもとに,高血圧が脳卒中,虚血性心臓病,脳血管性痴呆症および死亡に及ぼす影響を,他の危険因子を考慮して検討した.またその時代的変化も検討した.
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