冠動脈器質的狭窄に起因する虚血性心臓病の治療法の一つとして、経皮的冠動脈成術(PTCA)は、現在有用性こが広く認められている。米国のSpeawsらは、冠動脈を拡張する時にバルーンカテーテルに80-90℃の熱をごく短時間(10秒間)加えることによりPTCAの成績を著しく向上させた。現在では米国各地の病院で採用されている。しかし、彼らは発熱源としてNd : YAG レーザーを用いており、レーザー治療機器を有しない病院ではそのままでは採用できないし、高額でもある。そこで本研究では、発熱源として白金電極を用いた加温式バルーンカテーテルを開発し、臨床応用のための基礎的動物実験を行うことを目的とするものである。今年度は、つぎのことを行い、知見を得た。 1.加温式バルーンカテーテルを共同試作を行った。市販のバルーンカテーテルのバルーン部分(20mm)のシャフトに白金コイルを組み入れて発熱源とし、白金コイルはリード線で電源と接続し、カテーテルのシャフトに沿わせる。 ついでバルーンカテーテルのバルーン部分及び白金コイルと接触する部分は、耐熱製に優れたシリコン性に変更することにより加温式バルーンカテーテルの試作を数回にわたり行った。 2.白金コイル部分は100ミクロン線の2本撚線(ユニチカ(株)中央研究所製作)で、数ボルトの電圧で100度近くの温度をヒーター部分で得られるものをハンドメイドで作成した。初期のものはわずかな電圧の上昇でヒーター部分の断線をきたし、又表面温度も十分に上昇しなかった。今回最終的にバルーンカテーテル用いた白金コイルは、屈曲等にたいしては断線は生じなかった。 また、昇温特性も7ボルトで約75度と十分なものを作成しえた。 3.試作中の加温式バルーンカテーテルを用いて摘出血管に挿入し、加温状態を変化させることにより白金コイルの実用性について検討を加えると共に必要な電気量について実験を行った。
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