研究概要 |
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の病態生理学的意義を検討するため、高血圧自然発症ラットおよびネフローゼラットにおけるBNPと心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の生合成分泌機構を病期ごとに観察した。その結果、血圧の上昇はANP,BNPの生合成が増加するが、BNPは血圧上昇前より心室においてすでに増加していることが判明した。さらに血圧上昇にともなうBNPの産生の増加は、ANPより高いことが明らかになった。ネフローゼモデルラットにおいては、血圧の上昇がないにもかかわらず、BNPが増加しており、さらにBNPを投与した時の、尿中ナトリウムや尿量の増加が低下していた。これらのことから、BNPはANPとともに、高血圧や体液量の増加した病態に関与している可能性が明らかとなった。 心房性ナトリウム利尿ペプチドやエンドセリンなどの発見により新しい循環調節機構が明らかになってきたように、複雑で精巧な循環調節機構を解明していくためには、まだ同定されていない新しい循環調節因子を単離し、構造的に明らかにする研究が新たな研究の展開として非常に重要である。本研究では、循環調節に関与する可能性のある新しい生理活性ペプチドを同定する目的でラット血小板cAMP増加を指標に系統的検索を行い、ヒト褐色細胞腫より新しい降圧ペプチドであるアドレノメデュリン(AM)を発見することができた。AMは全く新しい生理活性ペプチドで、強力な降圧作用が認められた。さらに、正常人の血漿中にもかなりの濃度で、AM免疫活性が存在していることが明らかになり、AMは新しい循壊調節ホルモンの一つである可能性が高いと思われる。AMの発見は新しい循環調節機構の存在を示唆するもので、今後AMの生体内での役割を研究することで、新しい循環調節機構が明らかにされるものと期待される。
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