研究計画に従い摘出潅流心を用いて、虚血・再潅流後のmyoglobinの放出量を心筋障害の指標とし、preconditioningの効果を評価することを試みたが、myoglobinの放出量は個体差が大きく、有用な指標ではないことを示す成績を得た。そこで次にラットの摘出心潅流標本を用いて45分間の冠動脈閉塞による心筋梗塞をin vitroで作成し、梗塞量を心筋障害の指標とすべく実験を行なったところ、梗塞の作成とtetrazolium染色による同定が可能であり、またglobal ischemiaによるpreconditioningによっても梗塞が縮小されることが認められた。ところが、本研究と並行して行なった実験において、ラットの再潅流不整脈に対するpreconditioningの抑制効果はadenosine antagonistやpertussis toxinにより阻害されず、従来の家兎や豚などの梗塞モデルとは異なり、adenosineやGi蛋白の機能を介さないことが示唆された(平成5年日本循環器学会発表予定)。すなわち、ラットはpreconditioningの機序に関しては他の動物種とは大きく異なっていることが窺われ、我々の既報の家兎の成績と合わせてpreconditioningを解析するうえで不都合であることが分かった。そこで、次年度では、実験モデルを家兎の摘出心潅流標本へとさらに変更して検討する予定である。
|