研究によって得られた新たな知見等の成果 ヒト腎髄質、乳頭部の集合管上皮細胞の選択的分離培養で以下のことが判明した。 1、分離培養は可能であるがラット腎集合管上皮細胞と比べ、増殖力は弱く、受容体解析、サイクリックAMP測定等に十分な細胞を確保することは困難であった。2、継代培養による増殖では母細胞と異なるファイブロブラストの出現が多く、継代培養細胞に母細胞と同一性を見い出せなかった。3、新鮮ヒト腎皮質、髄質はサイクリックAMP測定には不適当であったが、受容体解析は可能であった。この結果、ヒト腎皮質、髄質粗膜分画で交感神経α2受容体に特異的拮抗作用を持つ^3H-ロウオルシンの結合をみた。この結合は皮髄質共に迅速で飽和性を示し、非特異的α受容体拮抗薬フェントラミンで分離された。Scatchard解析で結合は直線性を示し、Kdは5.6nM(皮質)、5.1nM(髄質)、Bmaxは33.4fmol/mg protein(皮質)、63fmol/mg protein(髄質)であった。拮抗阻害作用を検討し、アンタゴニスト群では、皮髄質共に、ロウオルシン、ヨヒンビン、WB4101、BAM1303、オキシメタゾリン、SKF104078、プラゾシン、コリナンチンの順に親和性を示すことが判明した。以上の結果から、ヒト腎皮質髄質共に、交感神経α2受容体のサブタイプα2A受容体の存在を示す結果が得られた。この結果は他研究所で報告のある遺伝子ハイブリダイゼーションによるヒト腎α2C受容体の存在とは異なるものであった。まったく違った方法による結果であり、今後の検討が必要である。 展開 交感神経α受容体はサブタイプ1と2に分けられ、さらにそのサブタイプA、B、Cが証明されつつある。これら究極の特異的分類はそれぞれの受容体に極めて特異的な拮抗薬の開発を可能とさせ、その薬物の主作用を限定し、副作用を少なくさせる可能性を示すものとみられる。
|