研究概要 |
ADP/ATP担体蛋白質(AAC)はミトコンドリア(Mt)内膜に存在しATPを細胞質に、ADPをMt輸送しているが、AACの量的な異常に関してはこれまで全く研究されていなかった。 本年度は心筋症ハムスターにおけるAACの量的異常に関して研究を行った。方法は実験動物として心筋症ハムスターJ‐2‐Nと、対照群として心筋症を発症しないハムスターを用いた。まず若週齢のJ‐2‐Nより採血して血清CPKの値で高度発症群(A群)から軽度発症群(D群)まで4段階に分類した。摘出心筋のMtを分離してAACに特異的に結合する eosin‐5‐maleimideにて標識した。SDS‐PAGEにて膜蛋白を泳動後,紫外線(UV)の照射によってAACのbandを確認してから、coomassie brilliant blueを用い蛋白質を染色しdensito‐meterにてAACの含有率および含有量を求めた。同時にMtのH^+‐ATPaseも測定した。その結果、電気泳動後のUV照射によりgel上にほぼ単一の蛍光するbandを認めた。これは分子量約30kDaに一致した。AACの含有率は対照群が14.4±0.21%であるのに対して,J‐2‐NはA,B,C,D群とも有意に低い結果であった(P<0.05)。 その中でもA群においてはAAC含有率が低く、この時点で発症を認めないD群は比較的高いAACの含有率であった。 次にMtのH^+‐ATPase活性を測定した。各J‐2‐Nは、血清CPKの高いものの方がH^+‐ATPaseの低下傾向が認められたが、いずれも非発症群のハムスターより活性は高くなっており(P<0.05)、代償機序より説明された。このようにMtのAAC含有率、含有量を初めて測定し得た。その結果心筋症を発症したハムスターにおいては、対照のハムスターに比して心筋MtのAAC含有率は低く、拡張型心筋症の病因の一つとして、ADP/ATP担体蛋白の異常が存在すると考えられた。
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