二年間の研究実績(平成4年4月〜平成6年3月)の概要は以下のごとくで、奇脈の出現に関する臨床的研究とともに、新たなテーマとしてパルスオキシメターを用いた動脈血酸素飽和度(SaO2)の24時間測定に関する研究が進展した。 I]奇脈の出現頻度とその臨床的意義に関する検討 睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われて来院した外来患者は平成4年度71例、平成5年度74例、計145例で、うち66例が精査および治療目的で入院した。Apneaの型は閉塞型61例、中枢型5例であった。本研究の主旨を十分に説明し、閉塞性SASの40(男37、女3、年齢15〜72歳)例から同意を得た。この40例について、睡眠ポリグラフィ下に胸腔内圧(Pes)および連続血圧測定を施行した。結果:1)奇脈は、平成4年度21例中13例(62%)、平成5年度19例中13例(68%)、計40例中26例(65%)に観察された。2)奇脈の出現はREM期よりnon-REM期に多く、obstructed inspiration中の著明なPes低下に一致した。3)奇脈の陽性群は陰性群に比べ、年齢が有意に若く、Pesが有意に低下した。4)nasalCPAPによる適切な治療は呼吸の改善に伴いPesを速やかに正常化し、奇脈を消失させた。5)ドプラー心エコー法による検討では、無呼吸中の奇脈に一致して“Flow velocity paradoxus"の所見が観察された。以上より、閉塞性SASにおける奇脈の出現頻度は65%であり、その出現は過度なPes低下(<-13cmH20)を示唆する所見として臨床的に意義がある。また過度なPes低下を呈するSAS患者ではnasalCPAP治療が有効であると結論された。 II]循環器疾患における24時間SaO2変動に関する検討 本科研費で購入したパルスオキシメターを用い、心不全患者の24時間SaO2変動を検討した結果、心機能の悪化に従って夜間SaO2低下が進行することが判明し、24時間SaO2測定は新しい心機能評価法になる可能性が示唆された。
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