研究概要 |
目的:tPA7日間投与により血管形成術後の傷害部への血栓付着を阻止することによって内膜過形成を予防できるかを検討することである。方法:43羽の10ヶ月齢の遺伝性高コレステロール血症家兎を用い、血管形成術は、大腿動脈を切開、2.5mmPTCA用バルーンカテーテルを総腸骨動脈へ挿入、血管形成術を総腸骨動脈に施行した。高用量群(tPA(H))ではtPA3mm/kg、低用量群(tPA(L))ではtPA0.6mg/kgを4時間で注入、注入終了後、高用量群ではtPA2mg/kg/24h、低用量群ではtPA0.6mg/kg/24hを耳介静脈へ7日間持続注入した。血管形成術28日後にPTA部の総腸骨動脈より2-4ヶの切片を採取、H-E染色、Elastica van Gieson染色を施行した。血管内視鏡による所見は、高用量tPA注入群5羽、対照群15羽を用いて、血管内視鏡による血管形成術(PTA)部の観察をPTA直前、PTA2時間後に行った。ファイバースコープによるPTA部の血栓を血栓量の最も多い部位で視野を35mmフィルムに写真撮影した。血栓量は写真における血栓の全視野に対する割合でスコアにして評価した。結果:組織病理所見では、PTA28日後の内膜は対照群0.50±0.25mm^2に比べてtPA(H)群0.07±0.11mm^2,tPA(L)群0.11±0.07mm^2でtPA群での内膜が有意に小さかった(それぞれp<0.01,p<0.05)。中膜、外膜は対照群それぞれ差はなかった。しかし、内膜.中膜比は対照群1.24±0.73に比べてtPA(H)群0.10±0.13,tPA(L)群0.21±0.19と有意に小さく(それぞれp<0.05)、狭窄率も対照群53±14%に対してtPA(H)群3±3%,tPA(L)群10±5%(それぞれp<0.01)と対照群に比べてtPA群で有意に小さかった。血管内視鏡所見では、血管内視鏡で血管形成術施行部の血栓を比べると、血管形成術2時間後の血栓スコアは対照群2.6±1.4に対してtPA(H)群0.8±0.4とtPA群で血栓形成が有意に抑制されていた(p<0.01)。結論:tPA7日間持続静注は血管形成術後の内膜過形成を防止することを実証した。
|