研究概要 |
Basic Fibroblast Growth Factor(bFGF)は強い血管新生作用を持ち虚血性心筋疾患における側副血行の面から注目されるが、我々は虚血心筋において血管内皮細胞のみならず心筋細胞それ自体においてbFGFが産生されることを見い出した。さらに心筋肥大モデルであるSHRや圧負荷心筋においても心筋細胞内にbFGFの産生を認めた。この心筋細胞内に産生された内因性bFGFは22、24kdの高分子型bFGFを含むものであり、この高分子型bFGFが心筋肥大を誘発していると推測した。さらにカテコラミン、アンギオテンシン1などの肥大惹起物質による心肥大においてもbFGFの産生が認められ、SHR心筋と同様に22,24kdの高分子型bFGFを産生していた。bFGF産生腫瘍であるhuman rhabdomyosarcoma(A204 cell)よりこの高分子型bFGFを抽出し、培養心筋細胞に対する心肥大作用を検討した。高分子型bFGFは蛋白合成の亢進、oncogeneの発現、胎児型収縮蛋白遺伝子の発現と心肥大を誘発した。recombinant bFGFの心肥大作用は軽微であり、高分子型bFGFに心筋に対する生物活性が存在すると推測された。また肥大心筋細胞には内因性bFGFに関連のあるTGFβ1の発現増強を認め、この発現は内因性bFGFで刺激時にも認められ、心肥大に伴う2次的な作用と推測された。さらにTGFβ1による細胞外基質(ラミニン、ファイブロネクチン、Integrin)の発現増強が確認された。心筋細胞にて産生された内因性bFGFはautocrine的に心筋細胞自身に作用し、TGFβ1による細胞外基質の増加を含めた心筋細胞肥大および肥大細胞の維持機構に働いているものと推測された。
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