研究概要 |
1.糸球体腎炎の腎組織への白血球浸潤における糸球体内皮細胞の役割について 小児糸球体腎炎患者の腎組織凍結切片を用い,各種モノクローナル抗体により糸球体における浸潤細胞のポピュレーション,各種接着分子,接着分子に対するリガンドの発現を免疫組織化学的方法で検討した.これまで得られた結果では,一部の患者で糸球体内での接着分子,とくにVCAM-1,ICAM-1の発現がみられ,さらにMac-1,CD18陽性細胞も認められた.糸球体内浸潤細胞は単球/マクロファージが優位であることから,これら細胞の糸球体内浸潤に内皮細胞接着分子であるVCAM-1,ICAM-1が強く関与していることが示唆された.今後,症例数を増やし糸球体障害の程度との関連についても検討予定である. 2.培養糸球体内皮細胞の白血球遊走因子産生について ウシ腎糸球体からBallermannらの方法に準じて糸球体内皮細胞を単離,培養し,得られた培養上清中の単球遊走生活性を測定した.単球遊走活性は,Nyco Prep 1.068を用いた比重遠心法によりヒト末梢血単球を得,48-well microchemptaxis chamberを用いてFalkらの方法により測定した.無刺激の細胞から得られた培養上清により遊走細胞の有意な増加を認め,さらにcheckerboard analysisにおいて培養上清による濃度勾配依存性の遊走細胞増加が示された.培養上清中の単球遊走活性は,interleukin1,phorbol-myristate-acetateによる刺激により,6,24時間後において,ともに有意に増強した.これらの結果により糸球体内皮細胞による単球遊走因子産生が示され,糸球体内皮細胞が腎炎の発症進行において糸球体内へのマクロファージ浸潤に関与する可能性が示唆された.
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