研究概要 |
培養糸球体内皮細胞のmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)産生機序について以下の結果を得た. 1.サイトカインの役割 炎症性サイトカインであるinterleukin-1(IL-1)およびtumor necrosis factor-α(TNF-α)は,培養糸球体内皮細胞のMCP-1mRNA発現に対して,容量および時間依存性の増強効果を示した. 2.細胞内情報伝達経路について 培養糸球体皮細胞のMCP-1mRNA発現誘導に関わる細胞内情報伝達経路を検討した.MCP-1mRNA発現はprotein kinase A activator(cAMP,forskolin)では誘導されず,protein kinase C activator(phorbol ester)により誘導された.phorbol esterの効果はprotein kinase C inhibitor(staurosporine)により抑制され,MCP-1mRNA発現におけるprotein kinase C活性化の関与が示唆された.一方,IL-1,TNF-αによる発現誘導はtyrosine kinase inhibitor(genistein)によってのみ抑制され,サイトカインによるMCP-1mRNA発現誘導におけるtyrosine kinase活性化の重要性が示された. 3.転写因子nuclear factor κB(NFκB)について 糸球体内皮細胞における転写因子NFκBの活性化について,NFκBのsubunitであるp50,p65,c-Relの細胞内局在の点から検討した.TNF-αによりp65の核内への移動が認められ,その活性化が示唆された.TNF-αがMCP-1mRNA発現を誘導することから,MCP-1産生におけるNFκBp65活性化の関与が考えられた.
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