研究概要 |
種々の糸球体腎炎でみられるマクロファージの糸球体浸潤における糸球体内皮細胞の役割を検討した。 1.紫斑病性腎炎経過中に溶連菌感染後急性糸球体腎炎を発症した8才女児において,紫斑病性腎炎発症時に糸球体浸潤マクロファージを認め,急性糸球体腎炎発症時にはさらに増加を認めた.これより種々の糸球体腎炎発症における糸球体浸潤マクロファージの重要性が確認された. 2.ウシ糸球体内皮細胞培養上清中に明らかな単求遊送活性を認め、これはIL-1β,phorbol ester刺激により増強した.培養上清の単求遊走活性はmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)に対する特異抗体で吸収除去され,糸球体内皮細胞によるMCP-1産生が考えられた. 3.糸球体内皮細胞のMCP-1mRNA発現はIL-1β,TNF-αにより容量および時間依存性に増強した。MCP-1mRNA発現の細胞内情報伝達経路について,cAMPやforskolinは効果なくphorbol esterにより誘導され,その効果はprotein kinase C inhibitorで抑制されたことからprotein kinase C活性化の関与が考えられた.一方,IL-1β,TNF-αによる発現誘導はtyrosine kinase inhibitorで抑制され,炎症性サイトカインによるMCP-1mRNA発現におけるtyrosine kinase活性化の重要性が示された.また,dexamethasoneはMCP-1mRNA発現をわずかに抑制した. 4.培養糸球体内皮細胞のMCP-1蛋白発現はphorbol esterにより増強し,mRNA発現と同様のパターンを示した. 以上の結果から,糸球体内皮細胞はマクロファージの糸球体浸潤に関与し糸球体腎炎の発症,進行において重要な役割を果たすことが示唆される.
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