ヒト生検検体より腸絨毛および腎尿細管を採取するための予備実験として、ウサギをペントバルビタール麻酔下に、腎生検用シルバーマン針を用いて腎尿細管を採取、又小腸を切開し、粘膜をメスにて剥離採取した。コラゲナーゼ0.1%を含む重炭酸リンゲル液中に37℃、30分放置後、コラゲナーゼを同リンゲル液で洗浄し、近位尿細管および腸粘膜上皮をニードルにて単離し、オリンパスOSP-3顕微螢光装置を装着したIMT-2倒立顕微鏡上にセットした潅流槽に移した。細胞内Na活性および、細胞内pHを測定するため、SBFI-AM20μMおよびBCECF-AM2μMをそれぞれ潅流槽中に加え、室温にてそれぞれ1時間30分と30分間放置した上で、これらの色素を洗浄し、細胞内にトラップされたSBFIとBCECFをキセノンランプで励起し、細胞内NaおよびpHの測定に供した。細胞内Na活性については、腎尿細管と小腸粘膜上皮細胞ではいずれもいままで報告されている10〜30mMよりも高い値を示し、すでにわれわれも以前より知っている如く、SBFIをこれらの組織で用いた場合に、細胞活性の低下をひきおこしている可能性が示唆され、今後、取り込ませる色素量やリンゲル液中の代謝基質の選択について検討を加える必要があると考えられた。塩基性アミノ酸のリジンを投与するといずれの組織でも細胞内Naの軽微低下傾向が見られることから、この方法で、リジン/Na交換輸送体の解析が可能となることが示唆された。pH測定については、いずれの組織でもほぼ従来の報告に近い値が得られ、今後プロトン輸送に共役した輸送体解析のツールとして期待される。ヒト生検検体での検討については、残念ながら今年度中の生検の機会が少なく今回充分に報告できるまでに至らなかったが、いずれの組織でも細胞活性を保って採取可能との方向にすすんでおり、今度の課題となっている。
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