[目的]腫瘍細胞にみられる薬剤耐性は化学療法における難問のひとつである。本研究では、新しい蛍光プローベfluo-3を用いて臨床上みられる低レベルの多剤耐性(MDR)の検出、解析を試み、多剤耐性蛋白(P-gp)発現との関連性を検討した。[方法]薬剤感受性のK562親株、多剤耐性K562/ADR、K562/VCR、初発および再発時の白血病細胞(2x10^6/ml 5%FCS加RPMIl640)を37℃保温後、Fluo-3A/M(和光、4μM)を添加した。FACScanのChronysソフト(Becton Dickinson)を用いて、1秒当たり1000〜2000個の細胞の平均蛍光強度(MCF)を530nmで経時的に測定した。さらにMDR克服剤のverapamil(Ver)やceparanthine(CP)を添加してMCFの変化を観察した。[結果]K562親株のFluo-3のMCFは秒単位で迅速に上昇した。多剤耐性のK562/ADR、K562/VCR細胞ではMCFの上昇カーブはゆるく、その程度は耐性度に依存し、P-gp発現と相関した。耐性細胞にVerやCPを添加すると量依存性にMCFカーブはその上昇率が高まりK562親株に近ずいた。またmethotrexate耐性のK562/MTX細胞株ではP-gp発現はみられず、Fluo-3の細胞内蓄積もK562親株と同等であった。白血病細胞では再発時のMCFカーブは初発時よりゆるく、VerやCP添加で有意に上昇率が高まった。また約20例で免疫染色法よりP-gp陰性とされたが、約35%の例でfluo-3の細胞内蓄積が多剤耐性パターンをとった。[結論]VerやCPによるMCFカーブの変化も加味し、fluo-3を用いたflow cytometry解析は、P-gp関連MDR出現とfluo-3の細胞内蓄積との相関を明らかにした。さらに本方法は迅速かつ鋭敏で、臨床上低レベルのMDRの検出に有用と思われた。
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