平成4年度に本研究の対象となったのは妊娠、分娩および新生児期に異常の少ない未熟児(在胎週数30〜33週)10名と脳奇形、脳出血、重症仮死などをもつ未熟児および成熟児6名である。危険因子の少ない未熟児は生後1週から分娩予定日までの間に最低2回以上自然のままで自発運動を観察した。観察は児を裸にして、保育器やインファントウォーマーに腹臥位で1時間、仰臥位で1時間寝かせておき、その間に起こる自発運動や姿勢をビデオ記録した。自発運動の解析は自発運動の中でも最も頻度が多く、容易に観察できるgeneral movementsについて行なった。それ以外に姿勢の分析も行なった。 結果:危険因子の少ない未熟児については出生から出産予定日までの間にgeneral movementsの出現頻度、持続時間などが年齢に応じて変化するようなことはなかった。脳病変をもつ子と危険因子の少ない未熟児の間では、general movementsの出現頻度、持続時間などに差はなかった。しかし、general movementsは脳病変のある子の方がぎこちなく、単調であった。 姿勢についても今まで言われていたように年齢に応じて変化するようなことはなかった。二つの群で姿勢についても差はなく、特異な異常姿勢というものは認められなかった。 考察:出生から出産予定日までの間に自発運動の定量的解析で脳病変の有無を判断することはできなかった。しかし、general movementsの内容は明らかに両群間で差があった。したがって、general movementをよく観察することで脳病変の有無を判定することができるのではないかと思われる。姿勢の評価で脳障害が解るのではないかということが良く言われているが、我々の研究ではそのことについては否定的な結果が得られるのではないかと考えられる。
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