「新生児期から乳幼児期までの自発運動の分析による周産期脳障害の判定について」が今回の研究の課題であり、先ず第一に自発運動の変化を未熟児で検討した。その結果、未熟児の出生から出産予定日までの間にはgeneral movement(GM)には年齢に応じた変化がないことが明らかになった。そして腹臥位と仰臥位によって運動が変化することが解った。また従来言われていたような姿勢も脳障害の判定には役立たないことが示唆された。 今年度の研究では、脳障害を疑われた新生児6例についてGMの評価と古典的神経学による診断とCTやMRIなどの画像診断のそれぞれについて神経学的予後との関係を検討した。その結果、GMの評価による脳障害の判定は画像診断と密接に関係しており、GMは脳幹部から以下の中枢によって引き起こされ、それより上部の中枢によって影響を受けることが示唆された。更にcramped-synchronizedパターンのGMは脳性麻痺との関係が強いと思われた。 従来より用いられてきた神経学的診断法では大脳皮質に病変のある症例では異常な症状は認められないが、GMは明らかに異常であった。したがってGMによる脳障害の判定は従来の神経学的診断法より優れていると思われた。Prechtlによれば経過を追って評価することでさらに診断価値が上がると言う。またGMを用いた評価法では異常パターンは今回のようなものだけでなく4〜5種類のものがあると言われている。今後症例を増やして検討を加える必要があると思われた。さらにコンピュータによる解析やスコアー化なども検討することによって定量的な判定方法を作ってみたいと考えている。
|