研究概要 |
本年度はPolymerase Chain Reaction(PCR)法を単純ヘルペス脳炎(以下HSE)、エンテロウイルス髄膜脳炎に応用し、以下の結果を得た。 (1)HSEの早期診断にPCR法が非常に有用であることは前年度明らかにした。今年度は単純ヘルペスウイルス(HSV)DNAの髄液中の存在様式を検討し、成人および年長児のHSEではウイルスゲノムはフラグメントの形で少量存在するのに比べ、新生児のHSEではウイルス粒子として多量に存在することが明らかになった。 (2)髄液中のHSV DNAの定量を試み、急性期では髄液中で10^<3-7>copy/mlのゲノム量が検出され、その後抗ウイルス剤治療に伴い減少、消失していくことが判った。又、(1)の年長児と新生児の急性期比較では、後者の方がゲノム量も多かった。(10^2copy/mlvs10^4copy/ml)。 (3)エンテロウイルス5'-noncoding regionの共通配列内のプライマーに用いて、RT-PCR法にて各種エンテロウイルスの検出を試みたところ、polio1,2,3型、コクサッキーB1,2,6型およびコクサッキーA9,16などが増幅できるプライマーペアがみつかった。 (4)次年度は、1HSE診断のためのより簡便なPCR法の開発、2エンテロウイルスPCR法を実際の臨床診断に応用する、3髄液中の細胞障害性T細胞(CTL)クローンの樹立を試みる、予定である。
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