昨年に続いて、強力な癌化学療法を施行した後の小児癌患者の末梢血リンパ球HGPRT座の突然変異につき検討を加えた。方法は、末梢血リンパ球を採取後、PHA及びrIL-2を添加培養し、6-チオグアニン(6-TG)添加、無添加の条件下で細胞をクローニングした。2週間後、両者のコロニー数をカウントし、HGPRT座の突然変異頻度(Mf)を算出した。本年度はまず、Age-matchedの健康小児(両親に検査の趣旨を説明し同意を得た)につきMfを求め、コントロール値を作成した。Age-matchedの健康小児のMfは、1-3_X10^<-6>で、正常成人より低値であった。更に、Mfが高値を示した(10^<-5>以上)ALLや悪性リンパ腫の患者につき、1年以上の期間に渡ってMfを経時的に測定した所、その殆どが有意の変化を示さず、HGPRT座の変異がStem cellレベルで起きている可能性を示唆した。得られた6-TG耐性クローンのHGPRT geneを、Pst-1 digestionによるSouthern blottingで検討した。患者から得たクローンでは、RFLPに変異の見られないものが約3/4で、一部Exonに欠損、変異のあるものが20%存在した。しかし、正常小児からのクローンでは、例数が少ないものの欠損例は見られなかった。 赤血球Glycophorin Aや、T cell receptorの変異頻度測定に関するAssay法を本年度に確立した。今後、HGPRT座の変異頻度の高い症例につき、これらの遺伝子座の変異を併せて検討して行きたい。又、我々はHGPRT座の変異頻度の高い患者リンパ球より、EB-virusを用いて細胞株を樹立するのに成功した。これらを用いて他のLocus変異や、DNA修復機構の変化等を検討したい。
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